【イタリア編】日本と世界の働き方はこんなに違う?!徹底比較!
「仕事のために生きる」のか、「生きるために仕事をする」のか。この問いに対する答えは、国によって大きく異なります。
日本とイタリアは、どちらも「勤勉な国民性」というイメージを持たれることがありますが、実際の働き方を比べてみると、そのカルチャーギャップは想像以上です。今回は、イタリアの働き方を日本と徹底比較しながら、私たちが見直すべきヒントを探ってみましょう。
労働時間と休暇の考え方
まず、労働時間の統計から見てみましょう。OECDが公表している「Hours Worked」指標によると、イタリアで「非常に長時間働く労働者」の割合は全体の3.3%にとどまり、OECD平均の10%を大きく下回っています。数字だけ見ると、イタリアの労働者が相対的に長時間労働をしていないことがわかります。
一方、日本は統計上の年間労働時間こそOECD内で低めの水準にありますが、これには注意が必要です。日本の場合、サービス残業や「持ち帰り仕事」が統計に反映されにくいという特性があり、実態はより長時間に及ぶケースも少なくありません。イタリアでは契約外の時間を無償で働く文化はほとんど存在しないとされており、計上されている数字と実態の乖離が日本より小さいと考えられます。
有給休暇の取得についても大きな差があります。イタリアでは法律で最低4週間(20日)の有給休暇が保障されており、取得率はほぼ100%に近い水準です。8月を中心にフェラゴスト(Ferragosto)と呼ばれる夏季休暇が2〜4週間程度取られる慣習があり、オフィスや店舗が一斉に閉まることも珍しくありません。
日本の有給休暇取得率は、厚生労働省「令和6年就労条件総合調査」によると2023年実績で65.3%となり、昭和59年以降で過去最高を記録しました。改善傾向にあるとはいえ、「休むことへの気遣い」が取得をためらわせる文化は依然として残っています。政府は2028年までに取得率70%以上を目標に掲げており、まだ道半ばの状況です。
ランチ・休憩の文化
イタリアのオフィスワーカーにとって、昼食は「急いで済ませるもの」ではありません。ランチに1時間から1時間半をかけることが一般的で、レストランでコース料理を楽しんだり、自宅に戻って家族と食卓を囲んだりするケースも多く見られます。
この文化の背景には、食事を単なる栄養補給ではなく、人間関係を育む大切な時間として捉えるイタリアの価値観があります。一方、日本ではデスクでパソコンを見ながら食事をする「デスクランチ」が依然として常態化している職場も多く、ランチタイムを業務効率の延長線上で捉える傾向があります。
職場の雰囲気と上下関係
イタリアの職場では、上司と部下の距離感が日本に比べてフラットなことが多いとされています。上司を名前で呼ぶことも珍しくなく、会議の場でも部下が率直に意見を述べる場面が見られます。
日本では、上下関係を重んじる文化が根付いており、会議での発言にも気遣いや根回しが必要とされる場面が多くあります。この「忖度文化」は意思決定のスピードに影響することもあります。ただし近年は、若い世代を中心にフラットな職場環境を志向する動きが広がっており、スタートアップ企業などでは変化が起きています。
雇用制度の違い
イタリアの雇用制度は、法律による労働者保護が非常に手厚いことで知られています。解雇規制が厳しく、正社員を解雇する場合には合理的な理由と適正な手続きが求められます。不当解雇と判断された場合、使用者は多額の補償を支払う義務を負うこともあります。
この制度は労働者に安心感をもたらす一方、企業側の採用への慎重さを生む側面もあります。結果として若者の雇用機会が狭まるという課題も指摘されており、イタリアの若年失業率(15〜24歳)は、Macrotrends(World Bankデータ集計)によると2023年時点で約22.7%に達しています。EU平均の14.7%(Eurostat、2023年12月時点)を大きく上回る水準です。
日本も解雇規制は比較的厳しい国のひとつですが、新卒一括採用と長期雇用という独自のモデルが長らく企業文化を形成してきました。近年は中途採用市場の拡大やジョブ型雇用への移行も進んでいますが、イタリアとは異なる文脈での変化です。
ワーク・ライフ・バランスへの意識
イタリア人にとって、家族との時間や趣味・余暇はライフスタイルの中心に位置します。「仕事が人生のすべて」という考え方は、イタリアの文化的価値観には馴染みにくいといえます。夕食の時間は家族で囲むことが基本であり、仕事の都合で家庭の時間を削ることへの抵抗感は日本よりも強い傾向があります。
日本でも、政府が「働き方改革」を推進し、残業時間の上限規制や有給休暇の取得促進が制度化されています。しかし文化的・意識的な変革はまだ道半ばといえる部分も多く、「休むことへの罪悪感」を抱く働き手は少なくありません。
テレワークと柔軟な働き方
コロナ禍を契機に、イタリアでもスマートワーキング(テレワーク)が急速に普及しました。法整備も進んでおり、スマートワーキングに関する協定を締結することで、場所や時間の柔軟性を持った働き方が公的に認められています。
日本も同時期にリモートワークが広がりましたが、対面主義・ハンコ文化・会議優先の慣習がテレワーク推進の障壁になった事例も多く報告されました。両国ともにデジタル化と柔軟な働き方の推進が課題となっている点は共通していますが、抱える課題の性質はやや異なります。
まとめ
イタリアと日本、どちらの働き方が「正しい」ということはありません。それぞれの社会的背景・文化・経済構造の上に成り立つものだからです。
ただ、イタリアの働き方から学べることは多くあります。休むことを「権利」として当然視する文化、食事や家族の時間を大切にするライフスタイル、そして仕事と人生のバランスを意識的に保とうとする姿勢は、長時間労働の課題を抱える日本にとって参考になる視点でしょう。
働き方の「常識」は、国境を越えれば大きく変わります。グローバルな視点で自分たちの働き方を見つめ直すことが、より豊かな仕事と生活のあり方を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
参考資料
OECD「Hours Worked指標」
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査 結果の概況」2023年
Eurostat「Unemployment statistics」(若年失業率・EU平均)
Macrotrends「Italy Youth Unemployment Rate」(World Bankデータ集計)


