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本屋で『喜ばれる人になりなさい』というタイトルを目にすると、「自分は人に喜ばれる生き方ができているだろうか」と、少し立ち止まりたくなります。
職場や家庭、友人関係のなかで、「もっと感じの良い人になりたい」「関係をよくしたい」と思いながらも、何を変えればいいのか分からないまま、いつも通りの毎日を過ごしてしまうことも多いのではないでしょうか。
永松茂久さんの『喜ばれる人になりなさい 母が残してくれた、たった1つの大切なこと』は、母からの一言を軸に、「人に喜ばれる生き方」をやさしく問いかけてくれる物語です。エピソードを追いかけるうちに、日々の小さな心がけの大切さが自然と伝わってきます。
この記事では、本のエッセンスとともに、筆者自身の経験も交えながら、「今日からできる小さな習慣」を整理してご紹介します。
母からの一言で始まる『喜ばれる人になりなさい』の物語
『喜ばれる人になりなさい』は、「人生で大切なことは、母がくれたたった一言だった」というテーマで綴られる、母と子の成長物語です。
母が残した「喜ばれる人になりなさい」というメッセージを支えに、著者が小さなたこ焼き屋から事業を広げていく過程や、家族との葛藤、別れまでが描かれます。
読み進めるうちに、「自分はどんな生き方を選びたいか」「誰のどんな笑顔を大事にしたいか」を静かに問いかけられるような一冊です。
『喜ばれる人になりなさい』が教えてくれること
「喜ばれる人」と「都合のいい人」は違う
本書がまず教えてくれるのは、「喜ばれる人」と「何でもしてくれる都合のいい人」は違う、という点です。
相手に喜ばれる人は、自分を犠牲にして尽くすのではなく、「この人は何を大事にしているだろう」「どうすれば本当に助かるだろう」と考えながら行動します。
できないことはきちんと伝えたうえで、できる範囲で力になる、その誠実さが、信頼と「ありがとう」を生み出していくのだと感じます。
喜ばれる人に共通する3つのスタンス
喜ばれる人には、いくつか共通する軸があります。
1つ目は「相手視点」です。
自分の正しさよりも、相手がどう感じるかを一度想像してみる姿勢です。
2つ目は「感謝の心」です。
してもらったことを当たり前と思わず、言葉や態度できちんと返そうとすることです。
3つ目は「約束や言葉に責任を持つ誠実さ」です。
小さな約束でも守ろうとする姿勢や、難しいときには早めに正直に伝える態度が、「この人の言葉は信じて大丈夫」と思ってもらえる土台になります。
派手な行動よりも、こうした当たり前のことをコツコツ積み重ねる人ほど、周りから長く信頼されていきます。
特別なスキルがなくても、この3つを日々少しずつ意識することで、周りの空気は確実に変わっていきます。
「喜ばれる人」に近づく小さな習慣
先に挨拶をして、相手の話を最後まで聞く
最もシンプルで効果的なのは、こちらから先に挨拶をして、相手の話を最後まで聞くことです。
職場で目が合ったら自分から会釈をする、オンライン会議でも最初に一言声をかける、それだけで相手は話しかけやすくなります。
さらに、途中で口を挟まずに最後まで聞き、「そうだったんですね」と一度受け止めると、「この人には安心して話せる」と感じてもらいやすくなります。
名前を呼ぶ・ひと言を丁寧に添える
会話やメッセージの中で、相手の名前をそっと添えるのも、小さいながら大きな習慣です。
「ありがとうございます」より「◯◯さん、ありがとうございます」と伝えるだけで、ぐっと心に届きやすくなります。
LINEやメールでも、「承知しました」だけでなく「ご共有ありがとうございます」「助かります」と一言添えると、「雑に扱われていない」と感じてもらえるようになります。
自分の経験から見えた「喜ばれる人」のかたち
ご褒美としての「承認」に気づいた子ども時代
筆者自身も、本書を読みながら子ども時代の母との関わりを振り返りました。
毎日違う習い事をし、家ではよく母に怒られていたため、「褒められた記憶」はあまり多くありません。
ただ、その一方で、結果を出すと必ずご褒美としてゲームやおもちゃなどを買ってもらっていました。
言葉での称賛は少なくても、「形としてのご褒美」が自分なりの承認になっていたのだと、今になって感じます。
“相手の伝え方はさまざまでも、根底には喜ばせたい気持ちがある” と感じました。
夢を止められたことが、別の「守り」だったと気づく
中学生の頃、「ディズニーで働きたい」という夢を母に伝えたとき、「それはやめなさい」と強く言われたことがあります。
当時は自分の夢を否定されたようでとても悲しかったのですが、大人になった今は、その言葉の裏側にある現実の厳しさや大変さを少しずつ知るようになりました。
夢の世界は、あえて夢のままにしておいた方が自分にとって幸せな場合もあるのだと思います。
あのときの言葉は決して私を傷つけるためではなく、“将来の自分を守ろうとしてくれた行動”でもあり、今ではこれも一つの「相手のためを思う関わり方」だったのだと受け止め直しています。
その一方で、今は、私の「やりたいこと」を基本的に全肯定してくれるようになり、その変化からも、少しずつ積み重ねてきた信頼関係を感じています。
「喜ばれる文章」を意識して書いてきた学生時代
大学卒業時、2人の先生から「文章を書く仕事をした方がいい」と言葉をかけてもらった経験があります。
意識していたのは、「先生が読みたいと感じる文章を書く」ということです。
先生が好む表現や構成を想像し、「他のレポートと少し違うな」と思ってもらえるように工夫していました。
結果として成績も良く、文章を認めてもらえたのだと思います。
振り返ると、これも「目の前の相手を思い浮かべて、喜ばれる形を考える」行動であり、本書のメッセージと重なる部分だと感じています。
明日から続けるためのシンプルなステップ
最初の1週間は「3つだけ」意識する
あれもこれも一度に変えようとすると、すぐに苦しくなってしまいます。
そこで、最初の1週間は「先に挨拶をする」「相手の話をさえぎらない」「小さな約束を守る」の3つだけを意識してみるのはいかがでしょうか。
できた日はカレンダーにチェックを入れるだけでも、「続けられている」という感覚が生まれます。
週に一度、「喜ばれた瞬間」を振り返る
週に一度、数分でよいので「今週、人に喜ばれたと感じる場面」を振り返る時間をつくると、小さな変化に気づきやすくなります。
同僚に感謝を伝えられた、家族の話を最後まで聞けた、先生や上司から「助かったよ」と言われた、どんな些細なことでも構いません。
その積み重ねが、「自分は誰かの役に立っている」という感覚を育て、さらに喜ばれる行動へとつながっていきます。
まとめ
『喜ばれる人になりなさい』は、特別な才能ではなく、日々の小さな選択や習慣が「喜ばれる人」をつくっていくことを教えてくれます。
筆者自身も、子ども時代のご褒美や、夢を止められた経験、先生に喜ばれる文章を書こうとした学生時代を思い返しながら、「知らないうちに喜ばれる行動を学び、選んでいたのかもしれない」と感じました。
完璧な人になる必要はありません。
一日ひとつ、「誰かが少しでも楽になる選択」をしてみる。
その小さな積み重ねが、職場や家庭、友人関係を少しずつやわらかくし、自分自身の心も満たしてくれるのだと思います。
